角膜異物
角膜異物とは、角膜(いわゆる黒目)に異物(飛入した金属片やごみ、植物片、時に虫等)がついたり、刺さって留まっている状態のことです。
発症状況としては、金属加工作業中や芝刈り、屋内清掃作業中に、ゴーグルを未使用だった場合などに多いとされています。
角膜異物の症状
角膜は痛覚が非常に発達している器官で、異物が付着すると身体のほかの部位に比較し、瞬時に痛み・異物感・流涙などの症状が現れます。
鉄片や鉄粉など金属片が角膜に刺さったまま放置しておくと、異物の周りに錆が発生します。
この錆を除去せずにいると、錆が角膜内に沈着し、炎症や混濁をおこします。
放置した際には、痛み・充血・角膜の不可逆的な混濁・視力低下などの症状を引き起こすことがあり、傷口に感染症が起こると、最悪の場合は失明に至るケースもあります。
角膜異物の治療
一般的な治療法は、点眼薬の麻酔をしてから、針やセッシ、場合によっては、小さなドリルで異物を除去し、感染症対策の薬物療法も行います。
角膜に刺さっている異物は、眼科医による顕微鏡下での除去を必要とします。
金属片が刺さって、錆が発生している場合は、可能な限り、錆を削り取ります。
除去後は感染を予防するために、抗菌作用のある点眼薬を処方し、眠前には眼軟膏を塗って眼帯(アイパッチ)をつけることもあります。
※角膜異物は治療よりも予防が大切です。危険な作業をする際、防護メガネ、ゴーグル、サングラスなどかけることが必要です。ちょっとした心がけで眼を守ることができます。
※眼に金属片が入った時は、すぐに眼科に受診してください。
化学眼外傷
化学眼外傷とは、洗剤や有機溶剤、髪染め液、石灰などが誤って、眼に入り障害をおこすことです。
飛入した物質によって受傷後の経過は異なりますが、時に失明に至ってしまうようなケースもあります。
化学眼外傷の症状
化学眼外傷の受傷直後は、結膜や角膜といった眼球表面の組織に炎症が起こります。
なかには角膜の表面が完全に剥がれてしまったり、角膜全体がスリガラスのように濁ってしまうこともありえます。
特に、飛入した物質が、石灰などアルカリ性だった場合、眼球表面の障害にとどまらず、眼の表面をどんどん溶かしながら、次第に角膜の深層まで浸透し、最後には眼に穴が開いてしまうこともあります。
たとえ、穿孔まで至らなかったとしても、角膜が白く濁ってしまい視力障害が残ることがあります。
なお酸性物質は、アルカリ性物質と比べ組織透過性が低いために、障害が組織表面にとどまることが多いといわれています。
身の回りにある化学物質
- 酸:
塩酸・硫酸(バッテリー液)・硝酸・酢酸・トイレ用洗剤の一部など
- アルカリ:
苛性ソーダ・苛性カリ・生石灰(乾燥剤)・セメント・モルタル・中性でない家庭用洗剤・カビ取り剤・パーマ液・毛染め液・脱毛剤など
化学眼外傷の治療
受傷した場合は、その場でなるべくはやく自分で洗眼することが重要です。
眼をあけたまま水道水などの流水で10分以上洗眼してから、眼科医院を受診するようにします。
また受診の際には、可能であれば、その原因になっている薬剤をご持参いただくこと。
加えて、どの程度の時間接触していたかなど受傷された際の情報をご提供いただけると幸いです。
眼の障害の程度によって、大きく治療法が左右されます。
治療法は、生理食塩水などを用いて、十分に洗浄洗眼し、薬物療法を開始します。
軽度であれば通院による治療で後遺症もなく回復することが可能です。
重症であれば入院のうえ手術を要することもあります。
※化学眼外傷の場合、治療よりも予防が大切です。危険な薬品を扱うときは、ゴーグルや防護メガネを装用すべきです。ゴーグルや防護メガネがなければ、サングラスなどでもかまいません。
これらの装備ひとつで、薬品が直接眼にはいるのが防げます。
眼部打撲症
眼球に強い外力を受け、眼のそれぞれの組織に血管の損傷や細胞の破壊を生じることです。
転んで眼をぶつけた・球技をしていてボールが直接眼に当たった・相手選手と接触した際に眼を強くうったなど、眼球が急激な外力を受けることが主な原因です。
眼球打撲の症状
かすみ、充血、眼痛、前房出血(房水中に血液が溜まっている状態)、虹彩・毛様体炎、物がふたつに見える、飛蚊症、視力低下などの症状がでます。
眼球打撲は様々な疾患を起こす場合があります。強い衝撃で眼球を打撲すると、急性緑内障・緑内障・網膜剥離・白内障・骨折を起こしている可能性があります。
①角膜外傷
角膜(黒目)表層の傷のことで、点状角膜症・びらんなどです。
角膜は体表面でもっとも近くが過敏な組織なので非常に痛みを伴い、涙が多く出て目が開けられなくなるころもあります。症状は強いものの、適切な治療をすることで数日でほぼ症状は軽快する事が多いです。
②結膜裂傷
結膜(白目の表面粘膜)が裂けることをいいます。
早期に洗浄消毒を要し、裂傷の範囲によっては、緊急で縫合処置を要します。
白目が赤くなる結膜下出血は真っ赤で見た目は派手ですが、出血そのものはほとんどの場合は自然に吸収されます。
③強膜裂傷
強膜(眼球の壁)が裂けることををいいます。直感的には、眼球破裂とほぼ同じ意味です。
非常な緊急事態で、失明の危険を伴うことから、緊急手術の適応があります。
④眼瞼裂傷
眼瞼(まぶた)が裂けることをいいます。緊急手術の対象になります。
⑤前房出血
前房(角膜と虹彩の間)を循環している房水中に血液が溜まっている状態で、視力が低下します。
ひどい場合は眼圧が上昇し、吐き気をもよおすこともあります。
大抵、数日で吸収しますが、受傷後1週間くらいまでは再出血の危険性があり、この間は運動などを控えるようにしなければなりません。
再出血が起これば吸収が遅く、遷延して角膜染色(黒目の裏面が赤く染まる)を起こすようになると手術治療(前房洗浄)をしなければなりません。
⑥隅角解離
眼球を前から押すような外力が加わったときに虹彩(茶目)と水晶体(目のなかのレンズ)が後ろに無理やり押し下げられて、虹彩の根元が角膜との間で裂けてしまいます。
後に続発性緑内障(眼圧があがって視野が障害される)や低眼圧黄斑症(不正乱視が出て見えにくくなる)の原因になることがあります。数ヶ月は眼圧の継続的な測定が必要で、状態によっては、これに対する加療を要します。
⑦外傷性虹彩毛様体炎
炎症細胞が前房中に出現し、房水が濁ってかすみ目を起こします。
⑧水晶体脱臼
水晶体が本来あるべき位置からはずれて、脱臼した状態をいいます。
また、水晶体が完全には脱臼しておらず、ずれているものを水晶体亜脱臼といいます。
水晶体が完全脱臼し硝子体中・前房中にある場合や、緑内障、ぶどう膜炎などの合併症を起こした場合は、手術で水晶体を摘出します。
硝子体中に水晶体が落下している場合、水晶体を破砕吸引します。前房中に水晶体が脱出している場合は、嚢内摘出術にて水晶体を摘出します。
⑨眼窩底骨折
目に対して直接ボールがあたるなどの外力が加わると起こる骨折です。
目を支えている骨や眼球が奥へ偏位し、複視の症状が出たりします。CT検査で確認の上、疼痛がなく、複視がひどくなければ(眼球運動障害が少なければ)様子を見る場合が多いのですが、日常生活のうえで疼痛や複視を認め、不自由を感じるようであれば手術が必要になります。
⑩網膜震盪症
網膜に強い外力が加わった結果起こる浮腫(腫れ)です。1週間くらいで回復します。
⑪外傷性網膜剥離
強い打撲による眼球への衝撃で、網膜裂孔や網膜剥離などが起こることがあります。
非常な緊急事態で、失明の危険を伴うことから、緊急手術の適応があります。
⑫外傷性視神経症
典型的には、眉部を強打した際に、眼球と脳を連絡する視神経に衝撃が至り、受傷後、視力低下や色覚異常をきたす疾患です。神経を保護するために、ステロイド大量投与による加療が必要になります。
眼部打撲症は様々な疾患を起こす場合があります。次の方は、速やかに眼科医に相談しましょう。
- (現在の目の症状に有無にかかわらず)ある程度、強い打撲を受けたと思われる方。
- (打撃の程度にかかわらず)打撲後、不快な目の症状が少しでもある方。
- その他、ご心配のある方。
検査について
受傷状態を詳しく問診した上で、視力検査、眼圧測定をし、瞳孔を開いて眼底部の精査を行います。また、必要な場合は視野の検査や眼底写真撮影も行います。
緊急性の度合いによっては、即刻、処置、または緊急手術になることもあり得ます。